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「……ずみばぜん。ずみばぜん。ガハッ。ゆるし……許じで……じひろざ……ゲホッゲホッ」
コンクリートに散らばった血を辿る様に靴で、血の痕を追っていく。川崎の首に体重を乗せ、血の付いた靴で体重を乗せていく。
「うるせぇなー。てめぇみてえなやつが俺の名前呼ぶんじゃねえ」
「……あ……ガッ……」
川崎が作り物の様に顔を赤く染めていくと、俺の冷え切った体に血の気が増して、首筋から熱が上がっていった。
川崎は徐々に動かなくなり、声を出すこともせずに口からはまた血が溢れ、白眼を向いていく。
「ア、アニキ……マジで死んじまいます……」
タカヤが俺の視界に入り込んで、申し訳なさそうに声を出す。足から解放された川崎は血を吐き出しながら、獣の様な声を出し咳き込んだ。悲鳴の様な荒い呼吸が施設内に響き渡る。
「おい。口塞げ。うるせぇ」
「はい」
リキヤ達が川崎の体を起こして口にテープを貼り付ける。川崎はもう大きく動くことはなく、ぐったりとうな垂れていた。
「てめぇの体焼くのに高え金払うんだ。ゆっくりと地獄をみろ。俺様に喧嘩売ったことをあの世で後悔するんだな」
「んーんー」
最後の力を振り絞り、川崎は椅子から逃げ出す様に全身を左右に振る。
「しっかりやっておけ。血、一滴残すな。機械使う時は榊さんに連絡入れろよ」
足元に転がっているナイフを蹴り飛ばす。輪を描く様にナイフが弾き飛んで、血が砂に混じって固まっていく。
「分かりました」
川崎の口はガムテープでガチガチに固められ、それでもなお泣き叫ぶ声は響く。
川崎はこの後、タカヤたちによって、生きたまま轟々と燃える火の中に放り投げられる。ゴミ溜めの中に放り投げられ、熱いと思うのも一瞬のうちだろう。
世間ではどうにもならない怒りや憎しみ、欲望によって人の命を奪うことがあるが、ヤクザをやっていると、相手に対して本気で怒り狂って人を殺す事はあまり無い。
メンツの為やケジメの為にヤクザは人の命を簡単に奪い、人の命の重みを見失い始めたら、きっともう人間ではないだろう。
叫喚がいつまでも身体に張り付いて、また1つ死神に魂を手渡す。死神からの見返りは一体何だろうか。
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