わたしの朝

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わたしの朝

 わたしの朝は一杯のブラックコーヒーから始まる。  コーヒーメーカーに水とフィルターをセットしてスイッチを入れる。ガリガリと豆を挽く音。結構大きな音がするのでホームセンターで買ってきた防音シートを被せる。  コーヒーが出来上がるまでに、ぼんやりした頭のままでジョウロに水を汲む。窓を開けると、生温い空気が部屋に入り込んできた。  ベランダに出て、ちょうど去年の今頃グリーンカーテンが作りたくて買った西洋アサガオに水をやる。アサガオは順調に育ち、今年はしっかりとその役割を果たしてくれていた。花は開いていない。  部屋に戻ると、コーヒーメーカーが動きを止めていた。ポットを持ち上げてマグカップにコーヒーを注ぐ。湯気の立つカップに口をつけると、いつもの香りが身体の中に流れ込んできて、わたしはようやく目を覚ました。  服を着替えてコンタクトレンズを装着する。  ピピピ、とスマホから音が聞こえた。万が一寝坊した時の最終宣告アラームだ。今日も余裕を持ってこのアラームを止められて良かった。  音が止まった画面にはSNSのメッセージ通知が何十件も入っていた。  珍しいな、と思い確認してみると、大学時代の友人グループの一人が結婚したらしい。メッセージが入っていたのはそのグループのトークルームだけで、他には来ていなかった。  おめでとう、と今送るのは迷惑かもしれない。仕事が終わってからにしよう。 「いってきます」  誰もいない部屋に小さく呟いて家を出る。  駅前にある大型スーパーで半額になっているおにぎりとお茶を買い、鞄に入れて改札を抜けた。  ホームのベンチではサラリーマンがいびきをかいている。酔っぱらっているのか、おでこまで真っ赤なその顔はなんだかとても幸せそうだ。  この幸せはわたしにはわからないんでしょうね。  寝そべるサラリーマンを横目に、わたしは電車に乗り込んだ。
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