射場にて

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庵理様の「お手付き」から数日が経った。 あれから、庵理様にも、他の継承者の方にもお会いしていない。 それが「普通」らしいのだが、毎日のように女華宮に顔を出しているらしい絽真様とも一度も顔を合わせていないのは、私が避けられているのか、それとも女華宮が単に広すぎるからなのか。 この何日かで女華宮を始めとした宮廷の女性のことや継承者、皇帝陛下、派閥などのことが少しだけ分かってきた。 基本的に女性のトップに立っているのは黄妃様。お話する印象では厳格だけど冷静で中立の立場を持っておられる感じがした。 剛山様の嬪である紫嬪様にはお会いできず、個人的には一番気まずかった庵理様の嬪である橙嬪様は、明るく応対してくださった。 「庵理様は私のような身分の者を嬪に召し上げてくださって、本当にお優しい方です。私は正室にはなれませんが、玲姫様ならば構いませんわ」 後から茗鈴に聞いたが、橙嬪様は女官時代、女華宮内でかなり虐められていたらしい。それを不憫に思った庵理様が嬪として彼女を迎えたんだとか。 (人情に厚い方なのかな…庵理様って) **** 「玲姫様、着きましたよ。こちらです」 今日は茗鈴ではなく別の侍女と男性の使いに案内され、中央宮の外にある射場へとやってきた。久川の許しが出て、急な公務などがない限りは射場の利用は許可された。 久しぶりの弓だ。腕がなまっていそうだが、何もせず女華宮で書物を読んだり他の女人と談笑するよりは、私には向いている。 男性の使いに用意してもらった弓矢を受け取り、道具の使用感を確認する。 「ありがとう、使わせてもらいます」 射場は、劉国にあった射場よりも広く感じた。誰もいない、的場までの静かな空間に懐かしさを覚える。 この静けさは、自分を取り戻すのにうってつけの場所になりそうだ。 (とりあえず慣らしで…) 前方はるか遠くに感じる的に向かって構え、弓を引き絞る。 矢の道筋がぼんやりと見えた瞬間、一気に放つ。 シュタン!! (あちゃー…) 的には当たったが…外縁に近い。 これは、勘を戻すのに時間を要しそうだ。 (でも……楽しい!) 10本放ち、矢を回収。合図が出たらまた10本放つ。 それを繰り返し、5巡目を終える頃には中央に的中する割合が半分を超えてきた。 気づけば汗が滴り落ち、道着がかなり湿ってきた。 「…筋(すじ)が良いな」
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