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※R18 狩りの夜
日差しが傾き始めた頃、早めの夕食をとり、二度目の湯浴みを済ませる。
閨の準備をする茗鈴は、いつもより少し高揚している様子だ。
「玲姫様の黒髪は本当に美しいですね。どんな殿方もこの髪の艶に魅了されてしまいます」
「茗鈴は殿方じゃないのに気持ちが分かるの?」
「もちろんですよ!さ、玲姫様?何か香を付けたらいかがですか?」
前回、香をつけずに庵理様を出迎えたとき、あの方は「いい香りがする」と褒めてくださった。
けれど、それは庵理様だったからなのかな。
女人の相手に慣れてらっしゃる絽真様には、香くらい付けた方がいいものか。
「迷ってます?」
「え?あ……うん…香って実は苦手で」
「そうでしたか。では、そのままでもよいかと思いますよ」
「ほんと?失礼じゃない?」
茗鈴はくすっとはにかんで頷く。
「失礼なことなどありますか!玲姫様、もっと自信を持ってくださいませ」
でも……庵理様はあの夜以降会いにいらっしゃることもなかったし。
がっかりなさったのかな。
余計なことが頭をよぎってしまう。
****
茗鈴に整えてもらい、いつぞやの夜のように、閨の間で待つ。
ほどなくして、男性の力強い足音が聞こえてきた。絽真様だ……分かりやすい。
床に座り頭を下げて待つ。御簾が上げられる音。挨拶の言葉を告げようとした瞬間に先手を打たれる。
「よいよい、そのような固い挨拶などいらぬわ。早うこちらへ来て楽にせよ」
「えっ、あ……はい」
慣れた所作で絽真様は、褥の真ん中に座って手招きした。
「はっはっは!そんなに警戒するでない。もっと近くに来られよ」
「っ……はい、申し訳ありません」
身体一つ分空けて座ると間髪入れずに指摘されたので、もぞもぞと座ったまま絽真様の隣へ移動しようとした。
「少し膝を貸せ」
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