※R18 初夜

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※R18 初夜

庵理目線 船旅の話はどこに行ってもウケがええ。 外国で難しい交渉をしたときも、先方を酒に招いてこの話をしよったら商談が成立した。 わしの話は、皆を笑顔にしゆう。 女華宮でうまくいっておらんかった蝶子と出会った時もそうじゃった。 人目のつかんところで泣いていた蝶子に、昔の話をしたらよう笑ってくれた。 そして今。 玲姫は、わしの話を聞いて、初めて笑顔を見せてくれちょる。 「玲姫、疲れちょらんか?眠かったら寝てもええぜよ?」 「大丈夫です、庵理様。お話が楽しくて、疲れも吹き飛びます」 「ほがなこと言っても、おまんは今日ここに来たばかりじゃ。慣れん挨拶に宴続きでしんどいじゃろ。……ほうじゃ!わしが子守唄を歌っちゃろ!」 玲姫は照れ笑いを浮かべちょった。おなごは皆、笑うんが一番じゃ。 「……ねんねん山の子うさぎは、なーぜにお耳がお長いぞ」 「っ……」 「小さいときに母さまが、お耳をくわえてひっぱった、それでお耳がお長いの…」 昔聞いた子守唄じゃから自信がなかったが、とりあえず最後まで歌えた。 やれやれ、と胸をなでおろして玲姫のことを見て、わしは驚いてしもうた。 「ど、どうしたんじゃ……なんじゃ悲しいことでもあったんか」 突然涙を浮かべて俯く玲姫を見て、心の臓がひっくり返りそうになった。 「すみません……あの……」 「どうしたんじゃ……わしが、変な歌うたってしもうたきか……すまんのう」 「ちが……」 咄嗟に頭を撫で、頬に手を寄せた。温かい涙が指先に触れ、先程とは違う胸の高鳴りを覚える。 蝶子には……感じたことの無い昂りだった。 「あの……実は、私の母は南方の出身で」 「……おお、そうやったか」 「国の言葉はほとんど聞きませんでしたが、その歌は……よく歌ってもらいました」 「ほうかほうか……」 「急に懐かしく思えて……もう、会えないから……」 「っ……」 顔を上げた玲姫の、赤みを帯びた目元に、またも体の奥がぎゅっと軋んだ。 手を出さない、と約束したのはわしの方だったのに……決心が揺らぐ。 「弱音を吐いてしまい、申し訳ありません。決してここに来たことを後悔しているわけではありません」 「そがに強がらいでもええぜよ。家族や故郷を思うんは悪いことやない」 「あっ……」 継承者の『手付き』があった事実が女華宮の者に印象付けば、わしの任務は終わるはずじゃった。 まだ男を知らぬ生娘に、入宮初日にそがな無理をさせたくはないやった。 実のところ、わしは蝶子にもまだ手付けをしておらん。蝶子はこの宮廷の中で気が合う妹のような存在じゃった。 おなごとしては……よう見れんかった。 蝶子にも同じ手を使った。閨の夜は夜通し興に耽ったんじゃ。 しかしな……今夜も同じようにできる自信が、のうなってきよった。 抱きしめた玲姫の体は想像以上に柔らかく、温かかった。この宮のおなごたちが纏う香の匂いとは違う香りがする。腹の奥がゾクゾクするような香りが。 「今日、わしのお手付きがあったとしても、すぐにわしのもんになるわけやないき。じゃけどな、玲姫」 玲姫の鼓動が跳ね上がっちょるのがわかる。わしもじゃろう。 「……これからは、わしがおまんの家族になりゆう」 「っ……庵理、様」 「選ばんでもええ。じゃが、わしはおまんを家族と思うて、受け入れる」 玲姫をよく見ると、南方の血の面影があった。黒髪に大きな切れ長の瞳、瞳は夜空と同じ深い藍色だ。 「きれいじゃの……おまんの瞳は」 「っ……あ、庵理様の瞳も、綺麗です」 顔を真っ赤にしてそがなこと言いゆうとは。 「まっこと可愛いのう」 「えっ……あ!」 こじゃんと可愛いことを言いよったら、もう抑えもきかん。 そのまま顎先を捉え、僅かに濡れた唇を指で撫でた。 「すまん……何もせんつもりじゃったが……」 「庵理、様……」 「……ええか?」 玲姫は頷く代わりに、長いまつ毛を伏せて応えた。 その様子があまりにも妖艶で……男を知らぬとは思えんほどじゃった。 「…んっ……」
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