異世界転生?

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異世界転生?

『おい、日下部この子やっぱり可愛くね。』 『んだよ、てか流行りのアイドルじゃねぇーか。あたかもお前の知り合い風に言うなよ。鈴木』 大学生活が始まりはや数週間、最初は田舎から神奈川県に住む事になり、不安でいっぱいだったが同じ大学できた初めての友人、鈴木に誘われて俺は今新宿に来ていた。 新宿といっても歌舞伎町とか怖い街じゃなくもう少し怖くないところだ。 まぁ、とにかく田舎育ちの俺からしたら何もかも凄くて、ぶっちゃけテンション上がってた。 第一志望の大学に行けなかったが、そこそこ学生生活を送り、今は楽しい。 鈴木康正、彼と出会えたのは俺の大学生活の中でも財産だろう。 俺は、鈴木と共にそんなくだらない話で馬鹿笑いをしていた。 そして、二人で近くの定食屋を探していると、誰かと肩がぶつかった。 俺はとっさに謝ろうとした瞬間、口の中から血が出ていることに気づく。 『は?』 俺はただ口を押さえ腹を見ると、包丁が俺の腹に突き刺さっていた。 それから暫くして、段々と意識朦朧として、俺はその場に倒れた。 ………………………………………………………… 気がつくと、幻想的な、いかにも女神様でも出てきそうな雰囲気のある場所に俺は立っていた。 そして、あたりを見渡してみると、後ろに女神と思われる女性が足を組んで高級そうな椅子に座っていた。 何故女神と思われると言ったかといえば、人間にしてはあまりにも神々しくそして、美しすぎる存在がそこにいたからだ。 俺は生まれて初めて胸が苦しくなるような感覚に苛まれた。 これが一目惚れ?などとつまらない事を思うが、まず第一に状況を把握しなければならないと思い銀髪碧眼の女神に尋ねる。 『ここはどこだ?』 『……つまらない質問をしますね。何故毎回貴方達小人は、示し合わせたようにその言葉を言うのですか?』 『…………』 そこまで言わなくても、俺はそう思った。 ただ状況確認したかっただけなのに 気を取り直して俺は再び尋ねる。 『えっと、あの、此処は』 『その質問に意味はありません。全く女神相手に2度同じ質問するとは万死に値しますよ。だいたい日本人なら、大体わかるでしょうこのシュチュエーション。』 『異世界転生?』 『足りない脳みそでようやく答えが出ましたか。はぁー、まぁ、4、50代の者たちよりは理解が早くて助かります。』 サバサバと言う女神らしき女は、こちらをまるで蟻でも見るかのように無機質な視線を向ける。 俺は、女神らしき女に言う。 『俺は別に異世界転生よりも、現実の世界に五体無事で返し頂けると嬉しいです。』 『ヘェ~、10代では珍しい発言ですね。まぁ、貴方は高校時代などもそこそこ楽しそうな生活をしていらしたみたいですし、その気持ちもわからなくありませんが、残念ながら一度死んだものを同じ世界に返してあげる事はできないのです。』 『じゃあ、仮に異世界に行ったとして俺がやらなければいけない事はあるのですか?』 『頭が冴えてきましたね。ですが、残念ながらありません。魔王討伐は貴方の数年前に現れた勇者が成し遂げましたから。それと貴方脳裏によぎるチート能力も与えられませんよ』 魔王討伐がなされたと言う言葉を聞いて、嫌な予感がしたが女神らしき女はつまらなそうな口調でそう言った。 『本来ならば、異世界人になる小人、つまり貴方にはギフト、俗に言うチート能力与えるのが慣わしですが、残念ながら魔王討伐がなされた今、与える事は出来なくなりました。元々ストックに限界もありましたし。』 『では、なんなら与えてくれますか?』 『ふ、貴方はどうやらスロウスターターの様ですね。段々と知恵が冴え始めましたね。他の小人達は絶望したり怒鳴ったりとか喚いたりとかウザイから、手っ取り早く魔物の群れなどに転送してあげましたが、貴方はなかなか面白そうなので勘弁してあげます。』 女神というより悪魔みたいな発言をした彼女は、頬を少しだけ緩めて言う。 『いいですか、チート能力というものはいわば宝くじのようなものです。お金についての理解が浅く浅慮のものが持てば破滅を必然的に呼び込むと言ってもいいでしょう。そもそも私はチート能力を与えらの反対立場でしたし、あなた方小人に手に余る能力与えても意味がない。そう考えていました。しかし、先代のバカ神のせいで多くの小人が与えられた力に良いそして死にました。』 『どれくらい?』 『そうですね、あなた方の世界だけでも10数万人は死にましたよ。魔王を討伐した勇者も結局恨みを買い秘密裏に殺されましたし。』 その言葉を聞いて俺は絶句した。 考えてみれば、異世界転生なんかに憧れる奴等は大抵現実で上手くいってない奴らだ。 そんな奴らに倫理観を捨てさせる力を与えれば当然恨みを買う。 そして死ぬ。 ごく普通でありふれた事だ。 さもすれば、素質が無いもの、つまり異世界召喚などと馬鹿げたものに夢を見ているものを手っ取り早く殺す事は彼女なりの優しさなのかもしれない。 だが一様怖いから聞いておく。 『俺は異世界転生以外の選択肢はあるのか?』 『無いと思って聞いてるのでしょう?正解よ。』 『やっぱり天国やらなんやら人数制限でもあるのか?』 『ええ。』 『じゃあ2度死んだ場合、優先的、あるいは早く天国やらに行けるとかあるのか?』 女神はこくりと頷く。 信用するほどの根拠はないが、わざわざ転生などと言う手間をしているくらいなのだからそんなルールがあっても不思議ではない。 俺は暫く考えた後に言う。 『もしギフトをくれるなら、その世界に対しての最低限知識、言語理解及び意思疎通ができ、文字を読み描きをできるようにしてくれ?』 『無理ね。一つしか叶えられないわ』 女神そう一蹴した。 まぁ、元からこの中の一つ意外はあればいいなあと思っていたからいいのだが、仕方ない。 『なら言語理解及び意思疎通で頼む。』 『……驚いたわ、もっとなんかゴネられると思ってた。』 本気で驚いた表情をする女神は、俺に質問してきた。 『なんで、もっとなんか要求したらゴネたりしないの?』 『無駄だから。』 『無駄だから?』 『あーなんと言うか、そもそも、また赤ちゃんからやり直さと言わないだけマシなのに、言語理解と意思疎通を覚えた状態で尚且つこの体転生させてくれるんだろ。じゃあ、後は向かうでがんばればいいだけだろう。死んだのは俺の運が悪い事、今さら女神様に文句を言っても仕方ないだろ。』 『達観してるわ、貴方』 そう言って、興味深そうに此方を見る女神はクスリと笑って言う。 『貴方なら大丈夫そうね。特別特典をあげるわ。』 『特別特典?』 『貴方の身体は向こうの人間からしたら弱すぎるから、平均値程度体力や筋力、適性を与えてあげる。』 『そりゃどうも、じゃあそろそろお願いできるか?』 俺はそう言った。 別にはやく異世界に行きたい訳じゃない。 この女神の気が変わらないうちに早く帰りたいのだ。 女神はクスリと笑った。 『それでは日下部 湊くん。良い旅を』 直後、眩い光に覆われ俺は異世界に転生した? ………え、路地裏? 周りには多くのガラの悪い奴等がいる。 あのクソ女神!!
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