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死神と航太の間は、5メートルも無かった。
もう既に鎌の射程圏内に入っている。
しかし、その死神は、そこで手招きをやめると、話しかけてきたのだ。
『あのぉ、ちょっとお伺いしたいんですけど、ここに次のバスが来るのっていつですかぁ?
いや、急にこちらに呼んでしまったのは申し訳ないと思っているのですが...』
死神に下手に出られて、航太の頭はいよいよ混乱で爆発しそうになった。
「え、えと、あと3分、ん、も無い、と、お、思われますが」
しどろもどろになりながらも何とか答える。
その死神は、顔を歪ませて『ありがとう』と言った。
その顔はニココと笑っているように見えた。
その死神はバス停の向かい側の畑の方に向き直ると、水の張られた田んぼをのっそ、のっそと歩く青鷺を見つめていた。
奥の方からだんだんバスが近づいて来るのが見えた。
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