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6
バスに乗ると、客は誰ひとりいなかった。
最後列のシートに座ると、背中を丸めて、死神が航太の隣にすっと座った。
鎌はいつの間にかどこかに消えていた。
運転手は、乗客なんて一々気にしていないのか、死神に驚くような素振りを見せることも無く、淡々とアナウンスをし、バスを走らせた。
航太は今すぐにでも逃げ出したかった。
なんならバスをもう一本遅らせるんだった、いつ死んでもおかしくない、と悔やんでも悔やみきれない思いだったが、後の祭りだった。
あぜ道はコンクリートで舗装されているとはいえ、ガッタンガッタン揺れる。
一際大きな揺れが、一瞬、航太の身体を浮かす。その時、死神の黒い布切れの間から何かが落っこちた。
黒いメモ帳のようなものだ。
表紙には律儀に“リスト”と書いてある。
この死神、几帳面なのか。
しかし当の死神は、自分が“リスト”を落としたことに気づいていないようだった。
航太は唾を飲み、覚悟を決めると、そっと“リスト”を拾い上げた。
拾ったはいいものの、死神に声をかけることを戸惑っている間に、死神は“リスト”を航太が持っていることに気づいた。
『ああ、落としてたんだね。
拾ってくれたのか、ありがとう、助かったよ。』
死神はそう言うと、再び真っ白な顔をくしゃりと歪ませた。
そして航太の手から“リスト”を受け取り、再び布切れの中にしまい込んだ。
───なんの“リスト”なのだろうか。
航太の頭の中で、答えは既にほぼ1つに絞られていたが、やはり実際は分からない。
そもそも横の髑髏が死神かどうかさえも未だにハッキリしていないのだ。
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