Love gauge:120 尊過ぎる恋心

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「私も、トキが好き。大好き。離れたくない。一緒にいたい。」 言葉を扱う仕事をしているくせに何の工夫も洒落っ気もない言葉が飛び出す。想いと一緒に涙が溢れて頬を濡らしていく。 「ユニ・・・。」 トキがその涙を指で拭ってくれる。その手に自分の手を重ねて頬に当てると、ホッとして心が柔らかくなるのを感じる。 「トキがあの女性(ひと)のことを好きになってくれてよかった。彼女が『英語ペラペラの人がいい』って言ってくれたから私はトキと出逢えたんだから。感謝してる。」 「!」 「私、過去の恋愛を、過去の自分を否定するのはやめる。今トキが好きって言ってくれる私は過去があるからここにいるの。過去は乗り越えるけど捨てないでちゃんと未来に持っていく。トキと一緒に前に進みたい。」 「・・・っ。」 トキの体が震えていた。それから抱き合ってしばらく泣いた。鼻をすする音しかしない鍾乳洞内の空気に含まれる(いにしえ)からの水分に私達の涙が溶けていくようだった。
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