ラーメン探偵 河野真一

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店に戻った私に探偵は報告書ですとA4の茶封筒を差し出した。 私は茶封筒をじっと見つめた。 この中に書いてあることにもうなんの意味もない。 彼女は幸せそうな既婚者だった。 「いまの出前も調査報告ですか」 「勘ぐらないでよ。ただのウチの出前ミス」 「私が、彼女の声を聞きたい、話がしたいと言ったから、だから……」 それ以上の言葉は出てこなかった。情けないが言葉にならない。 「出前を手伝ってもらったから、残りの依頼料はいらない。――まかない作るからさ、食べてって」  探偵は私の肩にそっと手を置くと厨房に入った。  私の涙で濡れたテーブルが蛍光灯に照らされて光っていた。
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