桃色の撫子

1/3
前へ
/3ページ
次へ
 寝室から見える狭い庭の片隅に、桃色の撫子が咲きかけていた。見たところ八分咲きといったところだろう。  「そう言えば、彼女も撫子が好きだと言っていたな……」 と私は呟いた。  庭から見た空は青天で、秋口には珍しく暖かい。こんな日を『はれの日』と呼ぶのだろう。  「おめでとう、香菜(かな)さん」 と空に向かって小さく言って、ふと彼女との時を思った。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加