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街をざわつかせた夏休みがおわり、かけ抜けるように秋が来て冬になり、
僕は中学生になった。
違う小学校の同級生に、お前の小学校、田口タイガが通ってたんだろ?と好奇の目を向けられ、
ライちゃんが「俺と友達だったなんて言うな」と言っていたことの酷さが分かった。
僕は知らなかったが、ライちゃん家族の事件は、テレビで大々的に取り上げられるくらい大きなニュースになっていたらしい。
家のパソコンでこっそりと
“ 和歌山 タイガ 殺人事件 ”で調べたら、
田口一家の悲劇 として大きなニュースが出てきた。
ライちゃんのお父さんもお母さんも、ライちゃんに似てとても綺麗な顔をしていた。
その後、ライちゃんから1度も連絡が来ることはなく、どうにかして彼とのつながりを作っておくべきだったと知恵のなかった自分を悔いた。
僕はどうしてもライちゃんとまた会いたくて、彼を放ってはおけないとずっとずっと繋がる手立てを探していたが、
1年たっても5年たっても、それは見つからなかった。
今ライちゃんが、どこで、どんな名前で、
どんな嘘を付きながらどんな思いで生きているのか、
それは誰にも知る由はない。
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