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悪の種
「やから月は人工物なんやって。」
『だとしたらやばくない?』
「やばいで。ジョーシキがくつがえされる瞬間やな。」
ライちゃんが僕の家から歩いて30秒のアパートに引っ越してきたのは2ヶ月前。
雨が降り続くなかの知らせだった。
大阪からやってきたライちゃんが、田舎のこの街に馴染むまでに時間はかからなかった。
足が速く、頭もいい。
今日返却された算数のテストはまた100点だった。
何でも出来るだけでなく、ちょっと凄みがあるのだ。
平々凡々な僕とは違うにおいがする。
「だからオーパーツやって言ってるやん。」
『そうなのかな。それなら火星も人工物ってことになるけどね。』
「ヨッタはアホなくせに、こういう話は詳しいからな…。もっとちゃんと勉強も頑張りいよ。」
家が近いこともあり、また、宇宙の話が好きという共通項目も相まって
今、ライちゃんと1番仲良いのは僕。
その事が何の取り柄もない僕の、1番の自慢だった。
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