本当のありがとうは、ありがとうじゃ足らない

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助けることができた。 無事だった。 それだけで今までの葛藤が 溶けた気がした。 そうして今は、 近くのベンチで足を さすりながら、 その彼と話している。 命の恩人である私の表情が 気に入らなかったらしく、 無理矢理、笑顔にしようとしてくる。 「今度は角度変えてみるか」 今度は、 私の顔を斜めから見てきた。 そこで私は諦めの言葉を口にした。 最初から分かってた。 できないって。 みんなには言わせたいだけ言わせておけばいい。 私のことなんかどうにだって思ってないんだから。 「もういいから」 もう一度、諦めの台詞。 今度は私の鞄をまさぐってきて 鏡を見せられる。 そこにはテレビから出てくる妖怪が立っていた。 これが私。 この醜い姿が私。 いいんだ、これで。 どうして笑う必要なんかある。 「なに言ってんだ。俺は命の恩人には笑っていて欲しいんだ」 「しらない」 「はぁ…じゃあなんだ? 俺とは元の何の関係もない 生徒同士に戻るってことか?」 こくり、と頷く。 私は、元からみんなとは違う。 結局、そこを変えるなんて 初めから無理だったんだ。 変わるなんて、 そう簡単じゃない。 ひとつの行動で根本的には変わらない。 1日だけ木に水をやり忘れても木は生きてる。 何も変わらない。
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