むしろご褒美です By 忠道

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 冗談だと言わんばかりに明るい口調にしているが、目の奥が全く笑っておらず真偽は非常に怪しい。ひぇっ。と、出そうになった半分大袈裟で残りは本気の悲鳴を飲み込んで、こちらも調子を合わせて呑気な顔をする。 「そんなに自信持たなくていいんですよ?」 「大事な人達が生きてるなら、興味無い人間がどうなろうと知ったこっちゃないよー」 「半分くらいは同意出来ますけど・・・君のそれは、結構狂気的なモノが入ってるからなぁ・・・」 「オレの懐にちゃーんと入ってる人間以外だと、松井とかアンタとか忠道とか。だねー。大事な人ってくくりの代表って」 「ああ、はい、流石に自覚してます。ぼくに何かと妄執してますもんねぇ・・・」  彼の暗黒の部分に口出しするのは、時間と糖分の無駄だ。普段通り深堀せず何ともない表情であしらうと、同時に、妙な癖(ヘキ)を持った人間に好かれやすい自分を、実に罪作りなヤツだなと皮肉混じりに鼻で笑った。  慣れきってしまった己の高い順応力は、素直に褒めたたえておく。 「わー凄いねー松井くん。でも、根っこにある大事な所に気付いてない辺りはピュアで純真だよねぇー」 「なんですかぁそれ。そんなに無垢なモノに見えます? ぼくって」  タカさんは短く、「うん」と自身に満ちた顔で頷く。 「そんなに可愛いもんじゃないと思うんだけどなぁー・・・」 「アレだよー。オレがドス黒くて邪悪の固まりみたいなヤツだからさー。相対的に、一層見えるんだよきっとー」 「そういう自分を卑下する表現あんまりしないでくれません? 君を極悪人扱いしたくないですし。歩さんもぼくのことをピュアだとか綺麗だとか、君と似たような例え方するんで複雑な気分になります」  タカさんが笑う。歩さんのことに関してはさっぱり読めないが、少なくとも、多分、庇われたことが嬉しいのだろう。
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