むしろご褒美です By 忠道

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  「あはは。嫁に貰うか婿養子になるかですったもんだ。歩さんは長子で、ぼく五男なんですけどね」 「あぁ、ね。単純に五男で実家継ぐ気なくて自由にしてるなら、婿養子でいいんじゃないの・・・?」 「歩さんいわく、婿養子に来て苗字継いでくれるのは非常に有難いけど、確実にカオスに引きずり込まれるし、プラス他の親類が悪い意味でベタベタドロドロ絡んでくること間違いなしだから、お互い精神衛生上宜しくない。って」  タカさんの目があからさまに据わっている。  まるで、ぼくか歩さんもしくは両方を物珍しい珍獣とみなし観察しているかのような。微笑ましさを感じ、温かさもあるのに、光が失せた焦げ茶色の瞳がこちらを、「ほぉん」とため息混じりに言って上の空で眺めているのだ。 「こっちは兄連中がしっかり継いでるんで、松井姓を継がなくても一切問題ないし。ちょっと珍しいし、せっかく素敵なお名前なんだから、緒方姓は残してあげたいなぁって考えがあるので、そこでまた食い違いがですね・・・」 「・・・ラブラブですネー」 「で、なんやかんや、いつもみたいに関係ない話にドンドン脱線しちゃって。すり合わせとか、どこでお互い妥協するとか、追求を始めたら一日や二日所じゃなくて。相当長丁場になるから、将来的に白黒は付けるんですけど、暫定で、強いて言うなら選択的事実婚っていう状態でもういっか・・・ってなりました」 「こんだけ込み入った話をしといて、婚約もすっ飛ばして、選択的事実婚自体はいい加減なんだ・・・」  タカさんの両肩が脱力している。最初の方に感じた、身構えて万が一に備えた緊張感のある静寂さよりも、呆れて言葉も出ないとばかりに、気だるげな雰囲気が今は強い。 「はい。途中で、時間が経ったら状況も考え方も変わるし臨機応変に対応出来る位置に居るのが最善だろうってなって。暫定的にですが、それで一度は両者納得しました」 「ヨカッタネー」 「多分、節目節目で何度も討論したりプレゼンじみたことはしていくんでしょうけど、結局二人とも睡魔や食欲に負けたり、疲れたり、飽きたりして少しずつしかすり合わせ出来ないんだろうなーって・・・あはははー」  やれやれと間抜けに笑ってみせると、つられたのか、同じくあははと彼も白々しく笑んだ。目は多少笑っているものの、瞼が半分下がっていて話題がツボにハマった訳ではなさそうである。
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