むしろご褒美です By 忠道

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  「オレと緒方ちゃんが? あは、ウケるー」 「言っときますけど、君たちそこそこ似たもの同士ですからね? 卑屈な所とか、自己犠牲しがちで、自分の身を顧みない辺りとか、分かってるのにタバコやお酒で身体を追い込む辺りというか」  ぼくは口元を微かに尖らせた。 「君たちのその生き急いでいる感じが、なんかヤです」 「それは失礼致しましたー」 「そういうのらりくらりして、人の言うこと全然聞かない辺りもホントに一緒ですよね」 「へへ」  浅く笑ってばかりで否定する様子は一切ない。長い付き合い故に性格の難儀さは分かりきっているが、毎度毎度こうしてはぐらかされていれば、誰でも自ずとぼくのように口うるさくなるだろう。 「全く・・・精神的に脆い所もそうだし、酒タバコに依存して、ガンガン削っていくのも。それを見ているだけで強く言えない、こっちの身にもなってくださいよ・・・」 「やーだー松井くんったらお優しー」  いつまでも呑気を装い理解しないたわけを、ぼくはシャツの襟を文字通り正しながらギロリと、かきあげた前髪の、おくれ毛の下から横目に睨む。 「君は、ぼくが命懸けで救った人間なんですよ。一度はっきりと理解(わか)らせた方が良いですかね? 実際、ぼくが死ぬことはなかったでしょうけど、万が一あの時、君を失ってたら・・・」  空いた方の手を拳にして、自分の胸元を強く叩く。 「ここが死んでいました。確実に」  自己肯定感の低い人間は埒が明かない。虚栄だか謙遜だか、承認欲求も少々混ざっているかも知れない控えなそれには、未だに共感し難いし息も苦しくなる。 「ほらもう行きますよ! 君の自虐ネタ、長いんですから。全然支度が進まないんですよ全く」  こき下ろしはいいから黙ってついてこい。と、何か言いたげに口をはくはくと僅かに開閉する彼を尻目に、話の腰をへし折りぼくは半ば強引に立ち上がった。
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