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それにしても、地元東北のお年を召した方々ならまだしも、関西でも女性が自分を俺と称する光景は初めて見た。山奥の出身だと宣言していたため、少しマイナーな方言なのだろうか。
それとも、別の意味がこもっているのだろうか。
━━30分くらいキスだけっての、初めてだったな・・・。
一人称も気になる所ではあるが、彼女との濃厚なスキンシップの余韻に浸るのも忘れてはいけない。ぼくは腕を組むと、やや下を向き、先程まで感じていた温もりに思いをはせる。
━━これくらいのスキンシップまでが、丁度いいんだけどなぁー・・・。
性欲が勝って行為に発展するのが常だ。少なくとも、これまでのぼくの経験上での話にすぎないが。抱く側、抱かれる側、両方経験してきた故に。
彼女の忍耐力というか、意地でも抱かせないその姿勢にぼくは関心していた。
「本読んだり、人の話を聞いた分には、もうコロッと落ちててもおかしくないと思うんだけ」
「松葉杖、はよ、来い」
「っ!? ホントに早かったですね、びっくりした・・・」
関西弁と標準語がごちゃ混ぜになった、浮ついた言葉が至近距離に。慌てて顔をあげると、相変わらず気配がほとんどない彼女は既に真正面に立っていた。
まだ意識が朦朧としているのか。
乱れたシャツを直す素振りもなく気だるげにたたずむ彼女の、普段は死んでいるかのような目は、いつからか分からないがずっと据わっていた。
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