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新入生を歓迎する
その後、何日経っても学校に行くと視線がぶすぶす刺さった。登校時も昼食の時も、廊下を歩いていたって、つき纏う視線の嵐。見られることに慣れているとはいえ、常に嫉妬や羨望、値踏みするようだったり、じろじろ好色に晒されると疲れるものがあった。
「あ、綾辻くん。」
いまも廊下を歩けばそこかしこから瞳が向けられ、気持ち足取りが重くなる。
「――今度は桐ヶ谷様とって。あのビッチめ」
「……あの方ともお知り合いだったんだ」
「うう、綾辻くんが狼に取られ……取られる……」
「もともとお前のじゃねえわ」
「機嫌悪そうだなあ」
溜息を吐けば、隣であわあわしている委員長が申し訳なさそうにしている。
大人しそうなのを侍らせて。あごでこき使ってんじゃないのと、どこからか聞こえた時には委員長が凄い勢いで首を横に振った。なんでボクじゃなくて彼の方が縮こまるのだろう。
「委員長。ピシッと」
「う、ごめん綾辻くん。俺が付き合わせたから……」
「最近ずっとだから気にしなくていい」
「俺なら胃に穴が空くよ。今日の会はここまで露骨なやつはいないと思うけど、嫌だったら帰っていいから」
そう。そこまで気遣わなくていいのにと思いつつ、返事をする。
今日は委員長が新入生歓迎会の企画の為に招集されている。そこに何故かボクも呼ばれた。素っ気ない文字の「かくれんぼ」が意外と好評で、こういう案も検討していきたいとこのことらしい。おそらくというか絶対に使い物にならないけれど。
それにしても、
「……鬱陶しい」
流石に面倒だ。
小声で言ったつもりだったのだが、委員長がゴホゴホ咳き込んだので掻き消そうとしたのかもしれない。
「大丈夫?」
「あ、いや、全然、全然大丈夫!」
それならいいけれど。
視線を振り切るように早足で進めば、だんだんと人気が少なくなった。会議や委員会活動で利用される、大きめの多目的室に案内され、扉の前で立ち止まると委員長がノックした。
「失礼します、呉羽です」
大きめの扉を開くと、向こう側にはコの字型に配置された机とまばらに座る生徒がいた。彼らがこちらを向き、委員長と隣りにいるボクに気がつくと会釈される。ボク達もそれに返すと指定された席に腰掛けた。
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