菊の花束

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これが私と旦那様の馴れ初めだ。 彼は酔った私との約束を覚えていたのだ。 私が35歳になるまでに彼氏が出来なかったら、結婚すると。 そして私の35歳の誕生日になるその瞬間にプロポーズをしに来たのだ。 だから、深夜24時に来たのだ。 誰よりも先にお誕生日を祝い、プロポーズするのだと決めていたそうだ。 それまで、確かにバルでは仲良くしていたし、よく私のことを綺麗だとか好きだとか言っていた。 だがそれはイタリア人の気質的なものだろうと私は思っていた。 後々になって聞くと、あれは本気で口説いていたのだそうだ。 でも私が本気にしてくれないから、35歳の誕生日という約束をしたのだと。 今では笑い話になっている。 そしてこれにはもう一つエピソードがある。 彼があの日に持ってきた花束は、 赤い菊の"蕾の花束"だった。 私は葬式や仏壇に飾るお花としてしか、菊の花を見た事がなかった。 それを大きな花束で持ってきたのだ。 これも後でわかった事だが、ヨーロッパでは菊の花は普通に高級な花として売られているそうだ。 特に日本の和菊は中でも高級品のようだ。 だから、日本でもそうだと思っていたそうだ。 まさか日本では仏花とは思わずに。 これも笑い話になった。
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