26人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
騒がしい居酒屋の片隅で、
私はどうやって菅本くんの本音をこの掌中に掴めるか今、勝負をかけた。
もし勝ったら、戦えずして逃げてしまった苦い初恋も、
平凡な海の底のお仕事も軽々と越えて、
こんな甘いことをしでかす君が好きかもしれない、って
このまま流れに乗って言えるような気がする。
「菅本くん、ねえ、菅本くん?」
今、難しい顔して何か考えこんでいるみたいだけれど、
わたしを攻め落とすのはかんたん。
先輩と言う名の重りに繋がれたわたしの手枷を、
きみの言葉で外せばいい。
かんたんに外れるよ、いまなら、たぶん。
スプーンでつつくような誤変換で
かんたんに割れたプディングなこころに
カラメルソースのようなとびきり甘い言葉を
私の心の真ん中に
とろとろと落とせばいい。
END
最初のコメントを投稿しよう!