62人が本棚に入れています
本棚に追加
学務係に向かう薄暗い廊下で、シュンくんがハルトくんといつものように戯れあっていて、私はそんな二人に笑顔にさせられていた。
少しの間が空き、ハルトくんのペースに戻される。
「でもさ・・・バンドももう少しで・・・終わりじゃん・・・だから・・・それまでは・・・出来るだけみんなで・・・一緒に時間を過ごしても良くない?」
そういうハルトくんの言葉に、
「そーだね、それ賛成。で、あとで教えろよ。」
とシュンくんの言葉はさらに笑いを誘った。。
そして今日もメンバーで集まって、練習が終われば5人揃ってご飯を一緒にすることになっている。今日は大学近くの5人でよく行く定食屋さんだ。当たり前のように奥の座敷に通され、靴を脱いですり減った畳上のテーブルに着くと、すぐにナオが口を開いた。
「ちょっと、何でハルトが俺の隣なんだよ。アキと替われよ。」
ナオは相変わらずこんな調子で私はいつもメンバーに申し訳なく思ってしまうのだけど、ハルトくんや他のメンバーはあまり気にしていないようだ。昨日の経緯をハルトくんやシュンくんから訊いたらしく、今日はイケさんも3人に溶け込んでいるように思える。そして、昨日のことがあって、逆にイケさんはナオの性格や本心を理解してくれたみたいだった。ナオは本当は優しいし真っ直ぐなのに、ちょっと真っ直ぐすぎて器用ではないから、主張し過ぎているように思ったり突っ走っているように感じてしまい、きっと分かりにくくて誤解されやすい。そして恥ずかしがり屋さんだから気持ちを隠したがる・・・そして言わなくていいことを時々話してしまう性格だ。
それからは出来る限り、みんなで一緒の時間を過ごした。練習後のご飯はもちろん、買い物にも連れだった。シュンくんがギターの弦を買いに行くと言えばゾロゾロと出かけ、イケさんが服を見に行くといえば同行した。
年末もみんなでここに留まって初詣に行こうという話になって、近くの神社を探した。近くに名前も知らない小さな神社があることを知って、みんなで出掛けた。そこそこの人の多さに逆に驚かされ、それほどの多さではないのにイケさんが迷子になってみんなで探した。みんながいないからと逆方向に帰り出したイケさんを見つけて、イケさんが方向音痴だということを知り、その日はその話で盛り上がった。
雪を見に少し遠出もした。レンタカーを借りて出かけ、ハルトくんとナオとイケさんが運転をしたが、またしてもイケさんの運転の時に道を間違えて、みんなでイケさんの方向音痴を揶揄った。そして初詣の時の話も再燃し、イケさんはそれからしばらくは剥れていた。
最初のコメントを投稿しよう!