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「あのさ、俺思うことあるんだけど。」
突然いつもと違うイケさんの空気にみんな驚き、イケさんに注目した。
「初詣とか花見とかやったけどさぁ、今のうちに5人でまだやってなくてやれることとかやりたいこと、やっておこうよ。」
この言葉が始まりだった。それからは各々がいろいろなやりたいことを出して実行していった。
「俺たちに似合わないバーベキューがしたい」と言い出したのはイケさんで、今日はその実行の日だ。レンタカーを借りてハルトの運転で隣県の海に繰り出すことになった。言い出したイケさんがバーベキュウセットや椅子を用意して、ジャンケンで負けたシュンが食材の買い出し役、俺は飲み物の買い出し役だった。基本みんなお酒は飲まないからジュースだけど、アキのためにちゃんとアルコールの用意も忘れなかった。そんな中、シュンが肉を買い忘れたことが発覚してみんな騒然となった。
「シュン!どうすんのよ。」
と言う俺に対して、みんながシュンをフォローならぬツッコミをする。
「シュン、ダイエット出来そうだよ。」
「いや、身体に優しいね。」
そんなことを言いながら、バーベキューならぬ野菜焼きをアルコールもなしで食べることになり、本当に良い思い出になったことは言うまでもない。そして、帰りの車の中でずっとシュンヘのツッコミは続き、いつもはクールで鋭いシュンは
「もういいでしょ。もうみんな言い切ったでしょ。」
と言う一言を最後に黙り込んでしまい、静かな帰りのドライブになって終了した。
そして、俺が花火大会にアキを連れていくことを知った日。あいつらは「俺らも連れて行け」と駄々を捏ねて、結局みんなで行くということになった。
「花火が見えるいい場所を知っている。」
とイケさんが言い出して、行ってみるとビルの陰で花火は全く見えず、慌てふためき花火の見える場所を探すイケさんの努力は報われず、結局花火の音の鑑賞会となって、こちらも可笑しすぎる良い思い出の一つになった。
シュンの魚釣りには毎回ついていったが、
「君たちが来ると魚が逃げるんだよ。」
と言っていたが、そんな言葉など気にせずに俺たちは構わず連れ立って出かけた。
それから、名前のない集まり・・・とにかくたくさん話して語り合って、気付けば朝ということも多々あって、楽しい時間はどんどんと過ぎていった。出待ちの子は相変わらずいたけど、俺はそんなことなど気にすることもなく振る舞っていた。が、いつからか他のメンバーたちは入りや出の時間を合わせて共にするようになっていた。
そんなこともあって、俺はアキに言ってしまう。
「あいつらがずっと一緒で、なかなかアキと二人きりになれないな。」
「・・・。」
「俺、もっと二人だけで一緒にいたいんだけどな。」
「・・・。」
何も答えないアキに言った。
「意味わかるよね、アキ。」
「うん。」
アキとふたりだけの時間が取れないという理由から、俺はこの頃からアキのマンションに住むことになった。
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