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そしてすでにこの時シュンくんとハルトくんは就活することを、イケさんは教師を目指すことを、ナオは大学院に進むことを決めていた。私も就活を希望していた。でも何に、どこにという希望などは未だなかった。時々はご飯に行ったり連絡を取ったりしたけれど、全員集合はなかなか難しくなってしまった。
「みんな、忙しそうだね。少し寂しいね。」
という私の言葉に、
「俺、アキがいるから別に寂しくないよ。え?なんだよー、アキ寂しいの?」
ナオが悪戯っぽい笑顔で言う。でも本当は私よりも寂しいって感じていることは知っていた。
そして卒業を迎えて、シュンくんとハルトくんは東京と福岡の企業に、イケさんは教員試験に落ちて地元長野県の臨時教員に、ナオは大学院へ進み、私は就活に失敗してアルバイトをしながら生きている。そして私はナオと相変わらずの生活を続けている。私はナオを失うことが怖くて、決まっていた地元の就職を蹴り、就活に失敗したと母に告げるとまた怒りを買ってしまった。が、昔のように悩むことも落ち込む事も無くなった。そしてみんなは遠距離もありだし、きっと心配はないと言ってくれたけれど、私にはその選択はなかった。私の居場所は地元でも実家でもない。あの日以来、私の居場所はここ、ナオの隣にある。
だから私は『Don’t think. Feel.』で、進める限りはこのまま進んでいこうと決めている。このナオからもらった価値観は今や私の宝物だ。
一方、この頃のナオは妙に自信ありげで落ち着いているように思う。研究に没頭しているからなのだろうか。そして他の人に対しても穏やかで優しくなったと私は感じている。
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