拉致

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「ひゃっふー」 スパンという快音と、歓声が響いた。 鞠男はドライバーの1打のみで、グリーンに乗せてきた。 「鞠男さん、調子いいっすね」 高校時代の後輩の亀山(かめやま)がおだてた。 「ちゅぽ」 紅一点、キャサリンも投げキスのような仕草をした。 「おいおい、みんなやめろって。まだこれからだろ」 言葉とは裏腹に、満足気な表情だった。 鞠男一行は、会計を済ませた。 みな、どこか完全燃焼できたような顔だった。 「また、行きましょう!」 亀山の威勢のいい掛け声で、ゴルフコンペは締め括られた。 「時間は、まだ1時か」 鞠男はどこかそわそわしながら、腕時計を確認した。 桃との約束は、3時からだから時間的には余裕がある。 一旦、シャワーを浴びる時間も充分ありそうだ。 帰宅すると、リビングで竜司が寝そべって雑誌を広げていた。 『モテるための10の秘術』というページが目についた。 「兄さんおかえり。そういや、半間(はんま)さんから配管組み直してほしいって、依頼があったよ」 「そうか。じゃあ発注書と受注書作っておいてくれ」 そう指示して、真っ直ぐ風呂へ向かった。 「たまには、事務作業してくれよ」 竜司は口を尖らせ、兄の背に向かって小声で文句を言った。
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