ささやかな楽しみ・・・

4/4
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
香りの良い珈琲で作るカフェオレは, 美桜の心をくすぐる。 両手に収まる程の大きさのカフェオレボウルに,並々とカフェとが注いでくれる。 おかわり用のカフェオレも, ポットに入れて用意してくれた先生に, 美桜は頭が下がる想いだ。 美桜は,四つ葉のクローバーが施された,見事なまでの懐中時計を開いて見いった。 「そろそろ時間・・・」 時刻は,17時半。美桜は掛けていた眼鏡を外し,指定席から目の前の窓に広がる景色を,ワクワクしながら覗き込み出した。 「また始まりましたね!美桜ちゃんのアレ」 明るい栗色の髪を束ね,デニム地のエプロンを着けたバリスタ修行をする緋南子(ひなこ)が,美桜の行動を楽しそうに見ている。 「緋南子さん,君は美桜さんから見たら『先輩(・・)』になるのですよ。そう言う事は・・・」 「先生,分かってるって!耳に蛸が出来る位,聞いてます!」 日比野先生のカフェでは,従業員を2人雇っている。緋南子は,カフェの裏側付近にあるシェアハウス『満 福 荘(まんぷくそう)』で暮らしていながら,バリスタの勉強を日夜行う努力家だ。 もう1人は,近くの高校に通う男子高校生の慎之祐(しんのすけ)『シン』がアルバイトをして切り盛りしている。 日比野先生をいれたブックカフェ『ソレイユ』の3人が,美桜の秘密を共有する仲間になった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!