9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「ではなく。異性として,美桜ちゃんはバイトさんの事,見られますか?」
再びの問いに,無言が続く。
「シンくんは『男の子』ではあるけど,心に何も『響かない』」
そう答えると・・・
「報われないですね・・・」
と,ボソッと呟いた。
「ぶぁっくしょん・・・!
誰だよ,オレの噂をしているヤツは。
オレは何時でもウエルカムだぜ(笑)」
大きなくしゃみをしたシンを,緋南子がどついた。
「な~にすっとぼけているの!慎之祐の噂をする天然記念物,居ないわよ!ごみ捨てとテーブルの拭き上げ,終わってないぞ!」
「了解っす,姐さん!」
「お止め!慎之祐。その名前を,お客さんの前で言ったら・・・」
「りょ,了解です。緋南子さん!」
半ば脅しに近い言葉を緋南子が言うと,
シンは得体の知れない恐怖に襲われる。
「宜しい。さっさと片付けたら,珈琲ご馳走してあげる!」
「本当ですか?急ピッチで片付けだ!」
嬉しそうに駆けていくシンの,後ろ姿を眺めながら,日比野先生がため息をつく。
「・・・前途多難な気がします」
「先生,慎之祐の前では,絶対言わないで。美桜ちゃんは元々ある筈のモノが,今は無いに等しい。
底の底にある僅かなモノが,多少残っているだけの状態。慎之祐の『想 い』すら気づいてない」
その一方で,
「美桜ちゃん,今度の日曜日に,我が家で母がパーティーを開催するの。どうしても,美桜ちゃんとソレイユの『皆さん』にも来て欲しいって」
葉月はカバンの中から,薄いピンク色の便箋から,お手製のチケット4枚を渡した。
最初のコメントを投稿しよう!