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扉を閉めると,外界と隔てられ,
夥しい量の本に囲まれる。
ブックカフェと謳うこの空間には,珈琲の匂いと,本の素材である紙の匂い,印刷されたインクの匂いが混じり合っている。
普段の少女は,
学校の図書室の本を愛用する。
学校の図書室の本は種類が豊富で,
普段から2~3冊の文庫本を借りる事があり,分厚いハードカバーの本は,1冊までと自分にルールを課していた。
珈琲店に響くのは,ページを捲る紙の擦れる音と,水を温めボコボコと踊るサイフォンの,珈琲の奏でる音楽だけ。
サイフォンから,リズミカルな音楽が終わりを告げ,先生は静かにカップに珈琲を注いでいた。
サイフォンの向こう側では,ミルクパンに温められた濃厚な牛乳を加える。
先生が選んだ珈琲も牛乳自体も,
どれも美味しいし,香りも最高だ・・・
少女が初めてここへやって来たのは,小学校に入学する前日,両親と妹の4人で外食する為に訪れたのだ。
両親は,若かりし頃のデートは,このブックカフェが多かったと,姉妹たちに話していた。
懐かしむ両親は,2人の世界に浸り,少女だけがつまらない顔をして,不貞腐れている。
せっかく家族4人で外出したのに,本に囲まれた見た事の無い場所に連れて行かれた挙げ句,大人の飲み物である珈琲を,飲む事を許しては貰えなかった。
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