雨宿りはカフェの中で

3/3

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
不貞腐れていた少女に, 父親が困った顔をしている。 「美桜には退屈だったな。悪かったな,ファミレスに連れて行かなくて。 でも,ここの食事も旨いんだぞ!小学校に上がる前に,美桜や楓子(ふうこ)を連れて行こうって言い出したのは,母さんなんだ!」 母親は,自分の子供には私立へという夢を持っていて,少女を私立小学校専門の塾に通わせた。 父親は,自分の妻の夢を知りつつ, 私立の学校へ行かせるのを良しとは思わなかった。 「いらっしゃい。ついにお子さんをうちの店にデビューさせたんですね」 話をしている脇からひょこっと現れた青年は,にこにこしながらお冷をテーブルに乗せている。 「こんにちは,美桜ちゃん,楓子ちゃん。 ボクは日比野(ひびの) (わたる)と言います。宜しくね! 明日から,ボクも美桜ちゃんと同じ小学校の先生として,働く事になってね。それも,美桜ちゃんの担任の先生が決定しているんだよ」 「日比野しぇんしぇい?」 「そうです!日比野せんせいです。一緒にお勉強していきましょうね」 にこやかに笑う渉につられて,自然と笑顔が生まれる少女は,これから長い間,日比野 渉という青年から人生に必要な事を教わっていくのだ。 「・・・さん?」 「美桜さん?どうしましたか?心ここにあらずですよ!」 先生が作ったカフェオレを手渡しして貰い,少女は恥ずかしそうにしていた。 「昔の事を思い出していたんです。小学校に上がる前日の,お店に初めて家族と来た時の・・・」 遠い昔の想い出に浸る少女に, 『そうでしたね・・・』といって,肩に手を乗せた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加