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ささやかな楽しみ・・・
美桜は私立の初等科から中等部に上がるのを辞退し,公立の中学校に入学を希望した。
初等科を卒業する前から,家庭に不協和音が鳴り響き,両親が修復出来ない所まで来ていた。
離婚が決まり,母親が2人を引き取ると言っていたが,頑として父親が条件を飲まず,悩んだ美桜が父親の側に残ると,母親に告げた。
何度も何度も『美桜,ごめんね・・』と涙ながらに伝えると,口をぎゅっとつぐんだまま,美桜の瞳から流れる熱い涙は伝えられない言葉と共に流れ落ちていく。
春・・・桜が散りかけ,柔らかな葉桜が出始める頃,父と娘の2人の共同生活がスタートした。
幼少の頃から,炊事と洗濯は父の教えもあり,母親の側で見ながら教わっていた。
中学に上がってからは,苦になる所かますます楽しさを覚え,料理の腕前も上達していき,側で見ていた父親もかなり驚いていた。
離れて過ごす母親と,妹の楓子を案じつつ,父親の前では2人の話をしない様にしている。
晩ごはん後のお晩酌の際,美桜の見ていない所で,声を殺して泣く父親をこっそり見てしまって以来,更に話さなくなった。
そんな生活を送っていた矢先,美桜の精神にも変化が起こり始めた・・・
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