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救いの女神はお嬢さま
カランコロン・・・
今日もブックカフェ『ソレイユ』は,
本好きのお客さんが重い木製の扉を開けて,本と珈琲を楽しみにやって来る。
夕方からアルバイトがある美桜は,移動途中で華やかな匂いの珈琲が漂う一角に差し掛かった。
「珈琲の焙煎所?」
古い煉瓦を再利用した外壁に,硝子張りの窓から,珈琲豆を煎る釜が見えていた。
好奇心の虫が疼き,美桜はおそるおそる店内へ入っていった。
「いらっしゃいませ」
清潔感あるワイシャツを羽織り,カフェエプロンを身につけた男性が,焙煎釜に張り付いて作業をし,レジの脇にいる別のスタッフが美桜の傍にやって来た。
「こんにちは」
スタッフの女性は,店内をキョロキョロと眺める美桜に,試飲カップに注がれた珈琲を手渡してくれた。
「ありがとうございます!バイトに向かう途中で,珈琲の匂いが漂って来たので,お邪魔しちゃいました!」
美桜の告白に微笑むスタッフさんは,
こっそりと教えてくれた。
この焙煎所は,オープンしてまだ日が浅く,焙煎釜で豆を煎る若い男性がオーナーだという。
試飲で貰った珈琲を口に含むと,爽やかな酸味と華やかな香りが広がり,身震いする程美味しいと思った。
「・・これ,美味しいです。どこの豆ですか?」
「エチオピア産のイルガチェフェです。好きなお客さま多いです。用途に合わせたブレンドもあるんですよ!」
スタッフの女性の熱弁に負けて,
イルガチェフェを100g,アイス珈琲ブレンドも100g買って,バイトの時間迫ってきた為,店を後にした。
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