アドベント ー United Japanese tea varieties of Iratsuko

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アドベント ー United Japanese tea varieties of Iratsuko

「感傷に浸るのはいいが、そろそろ時間だぞ」 体内通信で、忠告が飛んできた。 「そんないいもんじゃあないわ。少し綺麗だと思っただけよ」 「見慣れた景色だろ?」 確かに見慣れた景色だ。 聳えるビル群と、それらの根元と側面を照らすネオンの洪水。そしてそれらとは対照的に、遠くには暗黒の沈黙を湛えた山脈の陰影が見える。 「見慣れた景色を如何に新鮮に見るかで、QOL(クオリティオブライフ。人生の幸福度)は変化するのよ」 「そりゃあ素晴らしい人生訓だ。業務中にも実践できれば確かに言うことないね」 「ちゃんと待機してるわ。このビルの屋上の庭園に到着予定よね?」 高層ビルの淵に腰掛けて足を放り投げながら、背後を見る。 カメリア・シネンシスの連なりが何本か、奥に伸びている。 「そうだ。その茶園に到着予定だ」 「“茶”はオールドスピークではなくて? “CS(カメリア・シネンシス)”よ」 「わあってるさ。だが“茶園”の方が呼びやすくて生産性が高いぞ。それとも“CS園”とでも言うのか?」 「あるいはね」 問答にうんざりしてきた時、彼女は目の前の空間が歪んだのを逃さなかった。 向こう側のネオンの明かりが歪曲し、しかし混ざりあうことはなくマーブル状の軌跡を描く。 「茶園に現れるんじゃなかったの?」 「言ってんじゃねえか。何? どこに現れたんだ?」 「空中よ。地上500m」 「何!?」 いちいちうるさいので無視する。 「ようこそ、ザ・レア」
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