アドベント ー バクエット・ド・パクス

1/1
前へ
/267ページ
次へ

アドベント ー バクエット・ド・パクス

「わわっ……ったぁ!」 素っ頓狂な声を上げて、女性が空中から落下した。 「わわっ」は落ちるまで、「ったぁ!」は落ちて臀部を強打した時の声だ。 「痛ってぇ……」 打ったところをさすりながら、周囲を見回す。 夜の帳が支配していたが、満月の明かりのおかげで確認はできた。 茶園のど真ん中だ。 「やっぱりね、ってところだけど」 立ち上がり、ポケットに手を突っ込む。 板状の小型端末を取り出す。スマホである。 「まあ、圏外だわね」 スクロールしてポチポチする。 電波が立った。 なにせそのつもりで異世界にやってきたのだから、当然だ。 「しかし夜でこんな山の中ってのが、全くツイてないわね」 またスマホをポチポチする。ライトが点灯した。 「さて、行きますか」 歓迎もなしに、彼女は歩き出した。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加