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「父さん、仕事中に悪いけど。俺、結婚決めたから」
シレっと言った鷹人。
来人は突然の事に驚きポカンとなってしまった。
「今度の土曜日に、相手の人を連れてくるから。時間空けてくれよ」
「今度の土曜日か? それはまた早いなぁ。それで、どんな人なんだ? 」
「うーん。声が綺麗な人だったかな。優しい人で、物腰も低そうな人」
なんとなく曖昧な答えに、来人は何となく違和感を感じた。
「そうか。お前、交際していた人がいたのか? ぜんぜん知らなかったよ」
「交際なんてしてねぇよ」
「はぁ? どうゆう事だ? 」
フッとため息をついて、鷹人は携帯電話を取り出した。
「電話。今日かかて来たんだ、結婚して下さいって」
「電話? 携帯にか? 」
「ああ、今さっきだけど」
「誰からなんだ? 」
「うーん。城里ノエリ(しろさと・のえり)って名乗ってくれたよ」
「名乗ってくれた? 知らない人なのか? 」
「うん、知らない人」
知らない人と聞いて、また驚いた来人。
「どうゆう事なのか、説明してくれないか? ちょっと、突然すぎて良く判らないんだ」
できるだけ頭を落ち着かせ、来人は鷹人に尋ねた。
鷹人はちょっとめんどくさそうに、またため息をついた。
「簡単に言うと。知らない番号から携帯に電話がかかった、それに俺が出た。そうしたら綺麗な声の女性から「私と結婚して下さい」と言われた。それで「いいですよ」と答えた。それが流れ」
知らない番号からの電話で「結婚して下さい」と言われて「いいですよ」と答えた。
それで結婚を決めたと言うのか?
驚きながらも頭の中を整理した来人は、ちょっと深呼吸をした。
「そうか。経緯は分かったよ。しかし、いいのか? それだけで決めてしまって」
「うん。いいよ」
「相手の顔も分からない。声だけで女性と決めて、結婚を決めてしまう事に。父さんはちょっと不安を感じるが? 」
「ふーん。俺は全然そんなの感じないから」
あっけらかんとしている鷹人に、来人はこれ以上返す言葉が見つからなかった。
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