私と結婚して下さい

3/4
前へ
/84ページ
次へ
「父さん、仕事中に悪いけど。俺、結婚決めたから」    シレっと言った鷹人。  来人は突然の事に驚きポカンとなってしまった。 「今度の土曜日に、相手の人を連れてくるから。時間空けてくれよ」 「今度の土曜日か? それはまた早いなぁ。それで、どんな人なんだ? 」 「うーん。声が綺麗な人だったかな。優しい人で、物腰も低そうな人」  なんとなく曖昧な答えに、来人は何となく違和感を感じた。 「そうか。お前、交際していた人がいたのか? ぜんぜん知らなかったよ」 「交際なんてしてねぇよ」 「はぁ? どうゆう事だ? 」  フッとため息をついて、鷹人は携帯電話を取り出した。 「電話。今日かかて来たんだ、結婚して下さいって」 「電話? 携帯にか? 」 「ああ、今さっきだけど」 「誰からなんだ? 」 「うーん。城里ノエリ(しろさと・のえり)って名乗ってくれたよ」 「名乗ってくれた? 知らない人なのか? 」 「うん、知らない人」  知らない人と聞いて、また驚いた来人。 「どうゆう事なのか、説明してくれないか? ちょっと、突然すぎて良く判らないんだ」  できるだけ頭を落ち着かせ、来人は鷹人に尋ねた。  鷹人はちょっとめんどくさそうに、またため息をついた。 「簡単に言うと。知らない番号から携帯に電話がかかった、それに俺が出た。そうしたら綺麗な声の女性から「私と結婚して下さい」と言われた。それで「いいですよ」と答えた。それが流れ」  知らない番号からの電話で「結婚して下さい」と言われて「いいですよ」と答えた。  それで結婚を決めたと言うのか?  驚きながらも頭の中を整理した来人は、ちょっと深呼吸をした。 「そうか。経緯は分かったよ。しかし、いいのか? それだけで決めてしまって」 「うん。いいよ」 「相手の顔も分からない。声だけで女性と決めて、結婚を決めてしまう事に。父さんはちょっと不安を感じるが? 」 「ふーん。俺は全然そんなの感じないから」  あっけらかんとしている鷹人に、来人はこれ以上返す言葉が見つからなかった。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加