本当は手を繋ぎたい① 真琴編

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本当は手を繋ぎたい① 真琴編

 水族館に行く途中、ナビ上に眺めの良さそうな浜辺があるのに真琴は気がついた。 あそこなら2人ゆっくりお弁当食べられるかな?  真琴はこっそり後部座席に置いてた、お弁当とレジャーシートをちらっと見る。 「ねぇ先輩、浜辺(そこ)で少し休憩しません?」  信号待ちの時に、真琴は隼人を浜辺へと誘ってみた。 「疲れたのか?」  心配するように隼人が真琴の顔を覗き込んだ。 「いえ、水族館に行く前にそこでお昼食べたいなって思って」 「お昼…食べる?」  真琴の言葉の意味を考えるように隼人は首を傾げる。 「実は俺……」  後部座席に置いていた弁当の入った袋を真琴が引っ張り出し、 「お弁当作ってきたんです」 少し恥ずかしそうにその袋を膝の上に置いた。 先輩喜んでくれるかな?  チラッと真琴が隼人の方を見ると、 「本当に!?」 隼人は目をキラキラさせながら、真琴の方を見ている。 「先輩…嬉しい…?」 「嬉しい!!今すぐ、ここで食べたい!!」  隼人が弁当箱が入った袋に手を伸ばす。 「だ、ダメですよ!今は運転中です!」  真琴は紙袋を自分の方に引き寄せると、隼人の表情はしゅんと悲しそうになる。 そんなに落ち込まなくてもいいのに。 でもその表情、ポメラニアンがしゅんとしてるみたいで、可愛すぎる。 髪をわしゃわしゃして、抱きしめて、『好きだよ』って言いたいぐらい可愛い。 自惚かもしれないけど、そうしたら恥ずかしがって、顔を真っ赤にするんだろうな? この可愛すぎる先輩()が俺の恋人なんて、夢みたいだ。  隼人の可愛さに真琴は少し笑ってしまった。 「なんで笑うんだよ…」  少し拗ねたように隼人は口を尖らせる。 本当に可愛いな〜。 運転中じゃなければ、すぐに抱きしめる! 「そんなに急がなくても、この砂浜ならここから近いですしすぐに食べられますよ。砂浜(ここ)寄ります?」 「行く!」  真琴が言い終わったと同時に隼人が答え、ナビの行き先を変更する。 「今日の楽しみがまた一つ増えたよ。ありがとう真琴」  嬉しそうに隼人は微笑むと、また前を向き直し浜辺へ車を走らせた。
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