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本当は繋ぎたい① 隼人編
ナビの目的地を水族館に設定し、走り始める。そこは海沿いの道で、実は前日に道筋を隼人は確認していた。高速道路を使うと20分ほど早着くが、ドライブも兼ねたこのデート。やはり景色も大事だという理由で、海沿いの道を選んだ。
窓を少し開けると浜風と共に海の香りが社内に入ってきて、一足早い夏を連想させる。
もう少し暖かくなったら、次は海に行きたいな。
2人とも裸足になって、浜辺を歩くと気持ち良さそう。
俺がシートを持っていって、弁当作っていったら、真琴は喜ぶだろうか?
本当は今日も弁当を作ろうと思ったのに、料理が壊滅的に下手な俺は、何回練習してもダメだった。
海デートまでには、ちゃんと作れるようにしたいな。
運転しながら、隣に座り海辺を見たり、たまに隼人の方をチラチラ見たりしている真琴の気配を感じながら、隼人は運転していた。
しばらくすると、真琴はナビばかり見ている。
あれ?目的地入れ間違いか、なかなかつかないから心配してる?
隼人もナビを確認するが、目的地は水族館だ。
急にソワソワしだして、後部座席もチラリと見たり、おかしいな?
何か気になる事があるのか、聞いてみよう。
隼人が口を開けようとした時、
「ねぇ先輩、浜辺で少し休憩しません?」
信号待ちの時に、真琴は隼人に声をかけた。
やっぱり長いドライブで車酔いしたのかな?
「疲れたのか?」
心配するように隼人が真琴の顔を覗き込んだ。
「いえ、水族館に行く前にそこでお昼食べたいなって思って」
「お昼…食べる?」
真琴の言葉の意味を考えるように隼人は首を傾げる。
「実は俺……」
後部座席に置いていた弁当の入った袋を真琴が引っ張り出し、
「お弁当作ってきたんです」
少し恥ずかしそうにその袋を膝の上に置いた。
え⁉︎弁当!?
真琴が俺に!?
「本当に!?」
チラッと真琴が隼人の方を見ると、隼人は目をキラキラさせながら、真琴の方を見ている。
「先輩…嬉しい…?」
聞かなくても、嬉しすぎるに決まってる!!
ワクワクが止まらない!
「嬉しい!!今すぐ、ここで食べたい!!」
隼人が弁当箱が入った袋に手を伸ばす。
「だ、ダメですよ!今は運転中です!」
そうだった…。
今は運転中。よそ見できないし、ましてやこんなところで停めることもできない。
紙袋を真琴の方に引き寄せると、隼人の表情はしゅんと悲しそうになり、真琴は隼人の様子に少し笑った。
「なんで笑うんだよ…」
大人気ないと思うかもしれないけど、本当に嬉しんだって。
少し拗ねたように隼人は口を尖らせる。
「そんなに急がなくても、この砂浜ならここから近いですしすぐに食べられますよ。砂浜寄ります?」
「行く!」
今すぐ行く!
絶対行く!
真琴が言い終わったと同時に隼人が答え、ナビの行き先を変更する。
「今日の楽しみがまた一つ増えたよ。ありがとう真琴」
嬉しそうに隼人は微笑むと、また前を向き直し浜辺へ車を走らせた。
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