天界にて

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天界にて

「よぉ、ポチ! やっと転生決まったって?」 呼び止められた白い犬が振り向いた。 「ああ、パトラッシュさん、ありがとうございます。ようやく通知がもらえましたよ」 ポチは嬉しそうに尻尾を振った。 「パトラッシュさんは天界専属契約ですもんね」 「ああ、下界にゃあんまりいい思い出もないしな。天使に連れられて昇天したから、そのまんま就職願い出したんだわ」 「なかなか過酷な前世だったそうですね」 「そうだな、主人が薄幸すぎて、もう当時の俺の手には負えなかったな。ネロにはかわいそうなことをしたよ……」  パトラッシュはしんみりそういうと、ポチに話題を振った。 「お前さん前世は花咲じいさんのところにいたんだろ?」 ポチは苦々しげにうなずいた。 「そうなんですよ、気の良い飼い主だったんですけどね」 「なんだよ、問題でもあったのか?」 不思議そうに尋ねるパトラッシュにポチは言った。 「僕の転生がこんなに長引いた訳を聞いてくれますか?」
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