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動体視力
昔から目が悪い。
子供の頃に夜更かしして遊んでいたのが良くなかった様でその頃から眼鏡は手放せない。
コンタクトはなんだか怖そうで、レーシックは更に無理だった。
それでも、なぜか動体視力は良いみたいで友人らと下校中に目の前を飛んでいった鳥の足に付箋のようなものが付いていて更にそこに506と記されているのを一人だけ視認できたりした。
そんなバカなと友達に散々揶揄われていたが後に当日伝書鳩のレースがありその途中にいなくなった鳩のナンバーが506であることがわかった。
そんな目が良いのか悪いのかわからない人間が活躍できる機会もそれ以来訪れることもなく、普通に会社員となって働いていると、たまにではあるものの目が意思とは関係なく動く事があった。
動くときは決まって外で左右に素早く動いて元に戻るのだが、そんなときはぼんやりと何かの影のようなものが見えた気がするのだった。
しかし、もちろん何も居ないし周りの人達も全く普段通りに生活しているので単なる気のせいだと思っていた。
そんなおりにテレビで放送された極秘ファイルなどという眉唾ものの番組内でNASAの極秘映像として空を目視出来ないスピードで飛び回る生物の姿が捉えられているのを見てもしやと思い至った。
とんでもない高感度カメラの映像でぼんやりとした輪郭しか映されていないそれをUMAであると断定するには物証が足りないらしい。
スピードを計算してみると秒速五千メートルくらい出てるらしい。
もし、目の前を通っても誰も肉眼では捉えられない。
その時ふと何かの拍子にこの高速生物が人の住んでるところまで来たらどうなるのか考えてみた。
我々で言うところの深海にあたるのなら普段より何倍もの気圧で動きも鈍くなってくるかもしれない。
だとしたら、もしかすると……。
なぜか昔話に登場する空気を切り裂く妖怪の鎌鼬を思い出した。
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