人類補完教会

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そこで、ただ一人だけ声をあげていない若い信者がいた。 「おい、お前は?どうなんだ?」 見窄らしい男は若い信者に聞いた。 「いえ、僕は信じてます」 「何を?」 「この教会のお陰で心の壁が取れたと思ってます」 それを聞いた途端に(いが)みあっていた二人の信者はシンと静まりかえった。 「本当に?信じてるのか?」 「はい」 若い男はまっすぐな目で見窄らしい男を見た。 「そうか、なら出てっていい」 男は若い信者にそう命じた。 その頃教会にダイナマイトを巻いた男が立て籠っているニュースがリアルタイムで流れて各放送局はこぞって予定のニュースを差し替えて生中継していた。 「ちょっと!見て!これあなたの居た教会じゃない?!」 病室で見舞いにきた女性が入院している友人に叫んだ。 「あ、ほんと、、、」 テレビを観ている友人を横目に観て見舞いにきた女性はゾッとした。 なぜなら彼女は薄っすらと笑みを浮かべていたのだから。 「ちょっと、なんで微笑ってるの?」 溜まりかねて友人は聞いてしまった。 「へ?、、、だって思わない?、、あそこに居なくて良かったって」 彼女は人類補完教会の教えを守っていた。
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