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一週間後、一人の中年の女性が教会の扉を叩いた。
「あの、ここは人類補完教会ですか?」
「はい、そうですよ。よく来られましたね」
女性が明るく挨拶した。
「あ、あの、私でも大丈夫でしょうか?」
「大丈夫というと?」
「壁を取り払ってくれると聞いてます」
「はい、皆さんの壁を取り払うのが我々の使命です」
「そうですか」
「なんでもおっしゃってください」
「で、では、、、」
女性は柔和な微笑みを湛えて全てを受け入れるような面持ちでじっと言葉を待った。
「わ、私の、息子が、、、死にました、、殺されたんです」
途端に柔和な顔から血の気が引くのがわかった。
「、、あ、の、」
「殺されたんですよ、ここで、しかも殺した相手は情状酌量で、執行猶予までついて、だから、だから、、」
そういうなり中年の女性は地味なバッグの中から包丁を取り出した。
「きゃあああああああ」
女性信者は叫ぶものの腰が抜けたらしく四つん這いになって這うのがやっとだった。
悲鳴を聞きつけてまたも現れた男性信者は中心女性を突き飛ばした。
「うっ、、、ぐっ」
突き飛ばされた拍子に自ら持っていた包丁を腹に刺してしまった女性はそのまま卒倒した。
翌日のニュースで、またも人類補完教会の名が取り上げられて、女性が搬送先の病院で死亡したと伝えられた。
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