巨大な花

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 もちろん、会食の場として使われているのは、安いファミリーレストランなどではない。総理官邸に近い一流ホテルのレストランの個室である。注文したのは、前菜に、オムライス、食後のコーヒーとデザートがついて、「たった一万円のお得なランチセット」だった。 「なにか言いたいようだが?」  多々野が水を向けると、深沢はフンと鼻を鳴らした。 「単純なことだ。花だよ、花」 「は……?」  花? 花とはなんだ? 聞きかえそうとする。  それより早く深沢は立ち上がると、壁際の小さなテーブルに飾られていた花瓶を持ってきて、テーブルの上にどんと置いた。  名前は知らないが、白い花や、黄色い花がいくつも咲いている。  深沢はまたばかにしたように言った。 「花だよ、ヨシミちゃん」  う、と呑まれかけたものの、すぐに多々野は言いかえした。 「いいか、深沢、昔から何べん言えばわかる。おれはヨシミちゃんじゃ――」  ヨシミちゃんじゃなくてリョウケンだ、と抗議しようとするのを、深沢がさえぎる。 「花というのはな、ヨシミちゃん、オシベとメシベがあってだな。知ってるか?」
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