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「どうかな。昨日と今日と。答えられるだけの事は話してきた。何か、思い出しそう?」
瑠衣を見つめ、首を僅かに左に傾げ緩やかな笑みを浮かべてそう問いかけるサクヤ。
「ごめんなさい。なにも」
瑠衣が不甲斐なさを感じながらも謝ると、サクヤは散り際の花のような儚い笑顔で首を横に振った。
「謝らなくて良い。俺は、瑠衣が笑ってくれていればそれで良い。だから、そんな顔で謝らないで」
瑠衣は、サクヤのその優しい言葉と表情に胸が締め付けられた。本当は、ひどく寂しく切ないのではないだろうか。
視線をサクヤの手元に移せば、その手は握りしめられていた。
「サクヤさん」
「瑠衣。サクヤって呼んで?」
「サク……ヤ」
「うん」
瑠衣は、握られたサクヤの手に自身の手をそっと乗せた。驚いた様子のサクヤだったが、何も言わずに瑠衣の口から紡がれる言葉を待っている。
「あの……頭」
「頭?」
「はい。頭、撫でても……大丈夫です」
するとサクヤは更に驚いた顔をした。口がポカンと開いている。イケメンが台無しだ。
衝動的に言ってしまって恥ずかしかったのだが、瑠衣はそのサクヤの表情に思わず笑ってしまった。
つられて、サクヤも笑う。
「恥ずかしいな。そんなに変な顔をしてた?」
「はい。格好良い顔が台無しです」
「俺、格好良いんだ?」
今度は、瑠衣が恥ずかしくなる番だ。咄嗟にサクヤに重ねた手を引っ込める。
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