穏やかな日々

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 寝顔を見ていると、穏やかな気持ちになった。自然と手が伸び、指先が髪の毛に触れる。さらりと垂れたその毛先にすら愛しさを感じる。そのまま髪に掌を乗せる……瞬間、サクヤの目がパチリと開いた。  起き上がるのと同時にその手を捕まれた。  サクヤはとても驚いた顔をしている。 「ご……ごめんなさいサクヤ」 「瑠衣? っ大丈夫?!」  サクヤはどこか混乱しているようだ。寝起きで、驚いたに違いない。 「大丈夫だよ。少し怖い夢を見ちゃって。返事がなくて、勝手に入ってごめんなさい」 「そんな事はどうだって良い。瑠衣が大丈夫なら、それで」 「心配し過ぎ」 「そうかな。それで、どんな夢だったの?」 「わからない。思い出せないの。でも、すごく苦しかった。両親が出てきたような気がするんだけど……」  夢の内容を聞き、サクヤは一瞬だが戸惑いを見せた。   「そっか……今はもう、怖くない?」 「大丈夫。サクヤの顔を見たら安心したみたい」 「良かった」 「あの……サクヤ。一緒に寝ちゃダメ……かな」  下を向き、恐る恐る視線を上げサクヤを見た瑠衣は、安堵した。  サクヤは、いつもの優しい笑顔で微笑んでくれいた。 「一緒に寝たら、襲っちゃうかもよ?」 「え」 「冗談だよ。おいで」  その夜、瑠衣はサクヤの腕に抱かれて眠った。  瑠衣にとって、その数時間はとても幸せなものだった。もう、記憶なんて戻らなくても良いのではないかと、そう思ってしまう程に。
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