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だがそんな現実を、瑠衣は頭でも心でも理解できなかった。受け入れることなど、到底出来るはずもなかった。
瑠衣の心は、自分自身を責めることを、選んでしまったのだ。
「ごめんね、瑠衣。また、助けられなかった。でも……何度でも、いつまでも、君を支えるから」
サクヤは、自身の持つ能力で瑠衣の記憶を消した。悩みはしなかった。見ていられなかった。あらゆる手は尽くした。だが、これしかなかったのだ。
これで瑠衣の記憶を消すのは、何度目だろうか。もう、数えるのも止めてしまった。
その度に色々な方法を試した。だが全て失敗に終わってしまう。過去の記憶を消す度に、サクヤの心は廃れてゆく。
「だけど、瑠衣が笑うから」
そう。記憶を消している間だけは、瑠衣が笑ってくれるのだ。昔のように……。
「愛してるって、言ってくれるから」
記憶が戻る度に、サクヤへの愛を伝えるのだ。悲しいほどに、その愛の言葉はサクヤを縛り付ける。
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