世の中

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「さっきの続きだけど」  そう言って、サクヤは今の世について説明した。  流行りのアニメや漫画、有名人、食べ物、飲み物。今話題のニュース。この国の歴史について。  あまりにもインプットの量が膨大すぎて、瑠衣は頭を抱えた。 「瑠衣? 焦らなくて良い。君が、興味のある話から少しずつ覚えていけば良い」 「興味のある話……さっきの、ニュースの話。あれは、どういうことなの?」  瑠衣は、サクヤの話を聞き不思議に思ったのだ。  何故なら、目覚めてすぐの脳にというワードがあまりにも突飛に思えたから。 「あぁ。能力者によるウイルスの分析と治療薬、そして抗体薬のニュースだね。それを説明するには……そうだな。今から300年も前の事から話さなくてはいけない」  当たり前のように「能力者」と口にするサクヤだが、瑠衣にとっては聞き慣れない言葉だ。記憶がないだけで、それは忘れる前の自分にとっては普通の事だったのかもしれない。が、気になるものは気になる。 「もっと詳しく教えてください」 「やっぱり、知りたいか……。でも、瑠衣は今色んな話を聞いて脳が疲れてる。長くなりそうだし、この続きはまた今度。明日、目が覚めたら記憶が戻ってるかもしれないしね」  瑠衣は不服に思ったが、知ったばかりの人に我が儘を言えるはずもなく、やむなくその話を切り上げた。  その日はサクヤが用意してくれた食事を綺麗に平らげ、眠りについた。  眠りに落ちる前、瑠衣は食卓に出された枝豆がとてつもなく美味しく感じたことを思い出したのだった。
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