世の中

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*  次の日、瑠衣はサクヤから昨日の続きを聞いていた。  サクヤがあまり乗り気ではなかったのは、話が長くなってしまうからだろうか。 「今から300年程前、人々は新型のウイルスにその生活を脅かされたんだ。医療従事者等を筆頭に、沢山の人の活躍と気が遠くなるような努力や忍耐のお陰で、人々はなんとかその危機を乗り越えた」  これはサクヤが話して聞かせたほんの一部だったが、聞けば聞くほどにそのウイルスとは恐ろしいものだった。  世界中に蔓延し人々を死の恐怖と向き合わせたそのウイルスは、何千万人もの命を奪った。 「けれど、その危機を乗り越えた時、これではダメだと世界のトップに立つ者達は能力者をつくる計画を立てたんだ」 「その……能力者って?」 「能力者といっても、元々は人が潜在的に持っている才能や特質を、伸ばしているだけなんだ。例えば、元々予知夢を見るという人は予知の能力を。他にも様々な能力が存在する」  言っていることは理解できるのだが、どうにも難しい。 「全てを理解しようなんてしなくて良い。とにかく、今この世の中には能力者というものが存在するって事だけ覚えておけば問題ない。一般的に能力者と言われる人は、強い力を持った人を指している。俺たちみたいに小さな能力を持っていたとしても、能力者とは言われない。小さくても何かしらの能力を持っている人は、沢山いるからね」 「私やサクヤさんにも?」 「そうだね。俺にもあるよ。君は……わからない。能力を持たない人もいるし、大人になってから急に力を使えるようになる人もいる。瑠衣はその中の一人なんじゃないかな」
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