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「サクヤさんは、どんな能力を?」
「俺のは……言うほどのものじゃない。記憶が戻れば、思い出す。それより話の続きだ」
サクヤは瑠衣の方へ向けていた顔を、話をはぐらかすかのように反らした。
その様子に瑠衣は少しの違和感を覚えたが、それ以上は追及しなかった。
「因みに、能力は子供へと引き継がれより強くなってゆくことが多い。今回、300年の研究や能力の引き継ぎが実を結び、ついに新型のウイルスの驚異から解放されることができたのさ」
「解放?」
「つまり、能力者が予知した新型のウイルスは大変驚異的なものだったんだけど、他の能力者たちがその症状や規模の予知を元に、特効薬やワクチンの生成に成功し、流行を未然に防ぐことができたんだ」
「その能力がなかったら今頃は……」
「そうだね。300年前の悲劇の再来になるところだった。とは言っても、今はほぼ全員の脳にAIチップが埋め込まれているから、対応は早かったかもしれない。だが、ウイルスも進化を遂げている。予知した能力者がどれだけ悲惨な未来を見たのかはわからない」
「それで、大きなニュースに……」
「あぁ。この問題は300年前のウイルスだけじゃなく、もっとずっと昔からの、人類の課題だったからね」
サクヤはひとしきり話を終えると、短く息を吐き出した。
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