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「高級ホテル...?」
豪華なホールにでも続いてるんじゃないの?
本当に理事長室なの?
「どうした?」
お金持ちとの感覚の差に驚いていると柴田さんが不思議そうな顔をして聞いてくる。
「いえ…ちょっと金銭感覚の違いに驚いてました…。」
「あ〜そのうち慣れるよ」
慣れるのか。これに。
ここの生徒卒業後に苦労しそうだな...。
いや、就職先も豪華なのか。
コンコンッ
「理事長。転入生の槇くん連れてきました。」
『入ってくれ。』
む。今度は低音イケボだ。
「失礼します。」
重たそうな扉を開けてくれた柴田さんに続いて部屋に入る。
「失礼しま…す。」
「ようこそ四ノ宮学園へ。理事長の四ノ宮 冬至です。」
なんてこった。
扉を開けるとそこにはスリーピースのスーツを着こなすイケおじがいました。
「この学園最高…。」
「あらら。やっぱりそうなったか。槇く〜ん、戻っておいで。」
理事長を見たまま固まった俺に柴田さんが笑いながら声をかけてくれる。
「あ、すみません。よろしくお願いします。槇です。」
「成績優秀でこの時期に編入…ってどんな子かと思ってたけど面白い子だね。」
デスクからソファまで歩いてくる理事長の優雅さに気を取られているうちになんだか変な子認定された気がする。
「俺、面白くないですよ。至って普通です。ちょっと整った顔が好きなだけで。」
しっかり訂正しておかないとな。
「それが面白いんだと思うよ。」
「え?」
クスクス笑う柴田さん。理事長まで笑ってる。
美形を笑顔にできたってだけで俺は満足です…。
ありがたや。
「じゃあ俺はこのへんで。」
「あぁ、案内ありがとう。」
心の中で二人を拝んでいると柴田さんは仕事に戻るらしい。
「あっありがとうございました。」
「槇くんまたね。」
「はい。」
パタンと閉まった扉を確認してから気づく。
待って。俺今イケおじと二人きり?
あの色気ムンムンのおじさまと一対一で話すの?
「さて、早速だけど学園の説明をしようか。」
座って、と促されてふっかふかの革張りソファに座る。ホントにふっかふか。
どこまで沈むのかと思った。
「槇くんはうちの特殊な環境を知ってるかな?」
首を傾げて聞いてくる理事長に内心悶えながら答える。
「はい。学園案内の内容と…あと恋愛事情とか親衛隊については知人から聞いています。」
「そうか…。外部生には理解が難しいかもしれないけれど悪い子達では無いんだ。」
「分かってます。恋愛は自由だと思いますし、愛情が行き過ぎてしまうのも良くないことですけど理解できますから。」
アンバーの瞳をしっかりと見つめて思っていることを素直に言葉にする。
強姦とかは許せないけどなぁ。
好きすぎて、って言うのは世間一般の男女でもあることだから。
一瞬目を見開いた理事長がふわっと微笑んだ。
「ありがとう。」
え、死ぬ。というか死んだ。
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