忠犬だけど嫌なこと

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「ソイツはやめといた方がいいですぜ。人馴れしてないままにここまで成長してしまってますからね。子犬ならまだしも、成犬となると懐かせるのは難しいっすよ」 こっち見ながら諦め混じりの表情で説明する男の方へ見向きもせずに、突然訪れたその人は某から目を逸らさなかった。 「決めました」 「え?」 「この子にするわ」 「あの…お言葉ですが、今の話聞いてました?」 男が困惑しながら問うと迷いなく「ええ、ちゃんと聞いていたわ」と返す。 「それなら…」と言葉を濁す男にその人は諭すような笑みを浮かべた。 「夫とね…似ているの」 「旦那さんと…?」 「ええ、あの、人を警戒しきった瞳がね。若い頃のあの人にそっくりだわ。だけれど夫も私には次第に心を開いてくれたから。私はこの子に可能性を感じるの。きっと愛を知らないだけよ」 そう言ってまたこちらに笑みを見せたその人が某が一生に一度限りの忠義を誓った主だった。
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