忠犬だけど嫌なこと

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この言葉が何を意味するのか、人間の醸し出す空気感で何となく理解が出来た。年の功もあるだろう。自分の運命が同じ末路を辿るであろうことも容易に察していたのだ。 そして翌日、最後の餌が投げ入れられた。 この日は少しだけ多かった。これがあの男達のせめてもの優しさなのだろう。 いつもと変わらず素早く食べ終えて定位置に戻ってから一時間後、満腹で眠気を誘われ、少しうたた寝をしていた時だった。 「━━━……ッ」 ん…? 何かの音で目が覚めた。 これは…靴音か? 人間には聞き取れないだろうが、某にはすぐに分かる。いつもと靴音が異なることも。 いつもは気だるげそうな音だが、その日はそうじゃないように思えた。異変を感じて檻の外を眺め続けていると、片足が見えた。そして、一呼吸する前に、全貌が露になった。 誰だ…此奴。この様な所に何用だ。 視界が捉えたのは、年配女性だった。 上品な身なりで、こんな場所には似合わない。かなり痩せ気味の人だった。その人は某に気づくと、パッと表情を変えて笑った。その人の後ろから、某の檻に餌を投げ入れるいつもの人が彼女に言う。
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